特別寄稿

成功体験は踏襲し続けられない

株式会社じほう

報道局 日刊・PJ編集部 大塚 達也

 海外、とくに米国の医療保険制度に関する話を聞くたび、日本の公的保険制度の良さを実感する。
 例えば、抗菌剤の供給不足について。世界中の企業が、原薬や中間体の製造施設を中国やインドに依存しているため、ひとたび現地の製造所でトラブルが発生すると広範な地域に波及する。
 米国も例に漏れず影響を受けているが、自由市場的な側面が大きい同国において問題はより深刻のようだ。企業は、ただでさえ採算の取りにくい薬を、品薄の中で苦労して流通させるメリットを見いだしにくい。結果として流通量がさらに減り、米国のジェネリックメーカー幹部によれば、一部の医療機関は午前中に当日使用する薬剤を必死に買い付ける「その日暮らし」のようなことをしているという。
 日本では、製薬企業が負う安定供給の責任は重い。昨年供給不足が発生したセファゾリンナトリウムも、薬価を製造コストが上回る状態だが、企業は供給再開に努め、再発防止に向けた対応も打ち出した。そのような行動は、企業の姿勢もあるが、やはり医療用医薬品を公的インフラとして考える日本の制度設計が成立させたと言えるだろう。
 もちろん、その制度によって製薬企業の経済活動も支えられており、恩恵を受ける対価として責任を負ってきた部分も大きい。
 ただ、社会構造の変化によって医療費の抑制が叫ばれる中、日本の公的医療保険制度もこれまで通りにはいかなくなってきている。製薬企業も、その制度に頼った過去の成功体験を踏襲し続けられないだろう。
 一方で、米国型医療制度へのドラスティックな変革が起こる可能性は低く、公的保険が維持される限り、企業は「持ち出し」が増えても変わらず安定供給の責任を負い続けることになる。
 昨年、日本ジェネリック製薬協会が提示した次世代産業ビジョンはそのような環境に向けた今後の指針となるものだ。新たな時代でサバイブするため、そして日本の医療保険制度を適正に持続させるためにも企業は今、かじを切らなければいけない。

アスピリンと接着剤

薬事ニュース

野口 一彦

 2019 年の大きなニュースといえば、大手医薬品卸4社による談合疑惑ということになろうが、個人的には同じころに発表された2つのニュースに関心を持った。一つは、兵庫医科大学臨床疫学の森本剛教授らの共同研究グループが実施した臨床研究において、低用量アスピリン療法が、2型糖尿病の女性患者の認知症発症リスクを低下させる可能性を明らかにしたことだ。同臨床研究は、兵庫医科大学、国立循環器病研究センター、奈良県立医科大学および熊本大学の研究者らによる共同研究で、日本人2型糖尿病患者 2536 人を対象に、解熱鎮痛消炎剤「アスピリン」の低用量療法が認知症予防効果を有しているかを検討したもの。2002 年~ 2017 年の約 15 年間、認知症発症の有無について追跡を行った。そして、認知症を発症した 128 人を解析したところ、低用量アスピリン(81 ~ 100mg/ 日)を服用し続けた女性患者において、認知症発症のリスクが 42%低下したことが明らかとなった。これらの結果は『Diabetes Care』に掲載されている。同研究では、女性のみに効果が認められる結果となったが、さらに研究を進めていくことで、将来的に低用量アスピリンが認知症予防薬として活用されることが期待されるとしている。
 もう一つは、NHK「おはよう日本」で見たものなのだが、物質・材料研究機構がAIを活用し、世界最高クラスの強度を持つ接着剤を開発したというニュースだ。強力な接着剤は、通常2つの物質を混ぜ合わせて作られるそうだが、その組み合わせは無数にある。そこで物質の種類や配合する量などをAIに学習させ、1000 通りの組み合わせの実験結果を予測させた。そして上位4つのパターンを試したところ、そのうち1つが世界最高強度を持っていることがわかったのだ。人の手で実験すると1年半はかかる作業が、AIが予測するのにかかった時間はわずか1日だったとのこと。物質・材料研究機構の出村雅彦副部門長は「AIを使うか使わないかというのではなく、AIは必須の道具」とコメントしている。
 この2つのニュースは、これからのジェネリック医薬品業界にとっても大きな意味合いを示している。低用量アスピリン療法の臨床研究は、いわゆるドラッグ・リポジショニングの話であるが、「アスピリン」という基礎的医薬品(低薬価品)が、新薬開発でも難航している認知症を予防する可能性があるというところが画期的だ。東和薬品とタイムセラは、iPS 創薬によるドラッグ・リポジショニングに関し、「ブロモクリプチン」の家族性アルツハイマー病への新規適応を目指す共同研究開発契約を締結したが、このような取り組みがさらに増えることを期待したい。また、ドラッグ・リポジショニングだけでなく、開発中止となった薬剤から新たな効能を探索するドラッグ・レスキューにおいても、ジェネリック医薬品企業が関わっていく余地はあると思う。開発中止薬剤の中には、安全性が確認され、かつ特許が切れているものもあるはずだ。そうした品目について新たな効能を探索するのに、AIが活用できるのではないか。もちろん、配合剤の組み合わせにおいても、AIの力が発揮されるのは接着剤の開発を見ても明らかだ。「ポスト 80%時代」は、AIやベンチャー、データベース研究、医師主導治験等を活用することにより、ジェネリック医薬品企業も臨床開発に乗り出す時代なのではないかと感じた。

患者中心発想から新市場創出へ

薬事日報社

編集局 村嶋 哲

 患者参画型医療の重要性が叫ばれるようになった。海外の製薬企業では使える薬がない、薬が飲みづらいという患者ニーズを出発点に医薬品開発に乗り出している。患者が臨床試験に参加できるよう、製薬企業から臨床試験に関する情報を提供するほか、計画段階で患者の声を聞き、医薬品開発のプロセスに反映させる取り組みが進行している。
 ただ、患者中心という言葉ほど危険な言葉はない。かつては製薬企業が考える患者中心思考と患者が求める医薬品には大きな乖離があり、せっかく開発しても患者側に受け入れられずに、薬の飲み残しが増えてしまうとの問題も散見されていた。こうした現実を直視し、製薬企業は様々なアプローチで患者の意見を収集する努力を行っており、患者を含む生活者も製薬企業の医薬品開発がどのような形で行われているのか主体的に学ぶなど医療のリテラシーを身につけ、距離感を縮めているという。もはや患者中心というよりも、市民と一緒になって医薬品を開発していく市民参画の医薬品開発へと動き出しているのが現状である。
 医薬品に求められる価値が変わってきている。今後、医薬品の有効性や安全性といった科学的な評価だけではなく、患者の日常生活に寄り添える薬がこれから求められてくるのだろう。日本でもようやく患者を意識した医薬品開発が始まってきた。癌領域を強化する製薬企業では、薬の効き目は同等でも副作用を軽減する医薬品の研究開発が始まっており、臨床試験の評価指標として生活の質(QOL)の改善度を検討項目に加える企業もある。
 ジェネリックメーカーでも付加価値型製剤の開発に取り組むようになっている。水なしで飲める口腔内崩壊錠や製剤の苦みをマスキングする技術などが挙げられる。ただ、ジェネリックメーカーが考える製剤価値が、患者視点で付加価値として認められるものであるかは検証が必要だ。企業から患者への情報収集・提供をめぐっては規制の壁もあるが、ジェネリックメーカーの研究開発プロセスで真の医療ニーズの取り込みは必須になるだろう。
 全ての産業において商品が持つべき本質的価値が見直されつつある。自動車は移動手段から環境性能の高いエコカー、自動運転車へと進化し、自動運転技術と通信技術で人と人がつながるコネクティドカーという技術革新が起きている。新製品の開発は技術の進展だけではなく、消費者の存在が大きい。
 医薬品もモノとモノがインターネットでつながる IoT など新たな技術を組み合わせることで、医療コストを下げ、患者にベネフィットを提供できる可能性がある。患者の声を収集する体制から、ジェネリックメーカーの製剤技術と異業種を含む外部技術を組み合わせたアイデアで新たな価値が生まれ、新市場を創出していくことに期待したい。

次の壁を越える

アズクルー 月刊ジェネリック編集部

賀勢 順司

 東和薬品がスペインのエステベグループからジェネリック医薬品事業を買収する。これでジェネリック専業大手3社が、それぞれ海外事業に乗り出したことになる。成否は別にして、国内のジェネリックシェア80%達成後にジェネリックメーカーがどの様に生き残るのかという課題の回答を探る一つの旅が始まったと言えるだろう。
 2020年の前年となる2019年は、ジェネリック医薬品供給が試される年となった。年初には日医工のセファゾリンナトリウム供給が止まった。原薬元・原料元における二つのトラブルがその原因で、すでにジェネリック医薬品>>先発品となった分野におけるジェネリックメーカーに課せられた責任の重さを示した。一方で関連学会や医療機関から、メーカーを責めるだけでなく「安定供給可能な適切薬価を探るべき」という声が挙がったことは注目される。9月には、ラニチジン塩酸塩、ニザチジンに発がん性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が混入していたとして厚労省からメーカーに対し不純物分析と新規出荷停止が指示された。これは欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)が主導して問題提起した事案で、すでに18年にはARB向けの中国原薬から検出されメーカーの回収へと進んでいる。今後はNDMA混入のガイドラインが更に強化されそうだ。ラニチジン・ニザチジンに関しては、先発品メーカーよりジェネリック医薬品メーカーの方が素早い対応を見せており、市場の評価は高い。しかし、ジェネリックシェアが高まっていることで、一部のメディアから「ジェネリック医薬品から発がん性物質」という間違った報道がでる要因にもなった。恐らくこの様な無知故の「言い掛かり」は、再度増えてくるだろう。10月、沢井製薬と陽進堂が一人のレスリング選手から東京地裁に損害賠償訴訟を提訴された。18年に行われた試合後のドーピング検査において禁止薬物であるアセタゾラミドが検出され、選手が服用していた沢井製薬の胃炎・胃潰瘍治療薬エカベトに由来していたためだった。果たして医療用医薬品承認、製造販売基準を超えるドーピング検査に、製薬メーカーが対応しなければならないのか。ジェネリック医薬品の普及は、医薬品問題の最前線にジェネリックメーカーを立たせ始めている。
 一成分に対して先発品メーカーは1社でありジェネリック医薬品は多くが複数ある。故に激しい納入戦が繰り広げられて来たわけだが、一方で新薬・先発品より遙かにトラブルに対処しやすい。2020年からの市場を考える時、最も必要となるのは業界としてのコンセンサスではないだろうか。競う他社製品が自社製品を支えているというロジックに同意出来るかどうかで、日本の医療の大黒柱になり得るかが決まると思う。一つしかない業界団体での活発な話し合いを期待したい。もちろん公取に睨まれない内容についてだが。

残されたごはんから思ったこと

医薬経済社

坂口 直

 先日、ファミレスで昼ごはんを食べたときのことだ。隣の中高年くらいの男性が食事を済ませ、席を立ったときに、お皿の上にごはんが半分ほど残っていた。今、流行りの糖質制限ダイエットだろうか。子どもの頃に、お茶碗に米1粒でも残っていようものなら、母親から「あんた、残っとるたい。農家の人ががんばって作ったとばい」と言われ続けてきた私は、必ず平らげることが習慣になり、それゆえ残ったごはんが、つい気になってしまう。


 お昼を食べながら、年末の時節柄、業界のことをボーっと考えていたら、ふとジェネリック医薬品とごはんの境遇が重なった。薬価改定や原薬コスト増といった逆風下のなかで、安定供給のために設備投資や原薬調達に奔走している各社だが、お年寄りの家々では残薬の山がそびえる。医薬品とごはん、農家と製薬会社とでは比較対象にならないことは百も承知している。ただ、ジェネリック医薬品を担当しつつ、ここ半年間は高齢者と薬の取材につきっきりだった自分にはそう感じた。


 厚生労働省がまとめている「NDBオープンデータ」には、それぞれの医薬品について、各年齢層が1年間にどれほど処方されているか錠数ベースで記されている。その名の通り、オープンデータなので、ご覧になってもらえればわかるが、高齢者にはおびただしい数の医薬品が処方されている。まさにポリファーマシー問題を裏付けるような数字だ。取材のなかで、ある看護師さんが、「薬だけでおなかいっぱいになってしまいます」と言っていたのが印象に残っている。とある病院では、寝たきりの胃ろう患者にさえ、処方された10数の錠剤を手作業で砕き、シリンジで注入しているとも聞いた。


 入院患者がそんな状況だと、通院している高齢者のお宅に残薬の山ができあがるのも無理はないと思った。ポリファーマシー問題の対策としては、薬剤師が医師の処方をチェックして、薬を減らそうという動きが各地で出始めている。診療報酬でも薬剤師の対人業務にインセンティブをつけようとしている。医薬品の適正使用の推進だが、裏を返せば、これは薬の需要が減ることを意味する。そう容易に状況は変わらないが、じわじわとビジネスにも影響してくると思う。さまざまな要因で、今後ますます利幅が小さくなっていく業界だが、各社がどのような経営方針で、令和の時代を生きていくか、見届けたく思います。


 ちなみに、私はあらかじめごはんの量を減らして、残さないようにしています。1年間で7~8キロほどやせました。生まれは長崎です。

福島県における後発医薬品安心使用促進事業の取り組みについて

福島県保健福祉部薬務課

1.特色


 福島県は東北の玄関口と言われ、奥羽山脈と越後山脈に挟まれた日本海側の「会津地方」、阿武隈高地と奥羽山脈に挟まれた「中通り」、太平洋と阿武隈高地に挟まれた「浜通り」の3つの地域に分かれている。
 「会津地方」は全般的に起伏の大きな山地が占める地方で、北部を「会津」、南部を「南会津」として2つのエリアに分かれている。「会津」は大河ドラマ「八重の桜」の主人公「新島八重」を始め、白虎隊など歴史的な名所に恵まれており、観光産業が盛んである。「南会津」は美しい自然と豊かな森林・水資源があり、四季を通して多くの観光客が訪れている。
 「中通り」は県の中央に位置し、北部を「県北」、中部を「県中」、南部を「県南」として3つのエリアに分かれている。「中通り」は交通の便が良く、商業や工業が盛んに行われているため、人口密度が高く、医療機関も多い。
 「浜通り」は太平洋に面しており、北部を「相双」、南部を「いわき」として2つのエリアに分かれている。小名浜港や相馬港などを中心に漁業が盛んな地域であったが、平成23年の東日本大震災の影響により、多くの県民がふるさとを離れている状況が今なお続いている。


2.現状


 平成29年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、2020年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とすると定められた。平成31年3月時点における本県のジェネリック医薬品使用割合は78.1%であり、全国平均77.7%をやや上回っているが、全国順位は32位であり、東北最下位となっている。しかし、伸び率は昨年同時期より5.1%上昇し、全国6位となっている。
 地域別に見ると、「会津地方」及び「中通り」においては、一部のエリアを除き、ジェネリック医薬品の使用割合は80%を超えているが、エリア別に見ると、「南会津」及び「浜通り」の使用割合は70%台前半にとどまっており、地域格差が顕著である。


3.課題


 福島県のジェネリック医薬品使用割合を2020年9月までに80%以上とするためには、地域格差の解消が必要不可欠である。ジェネリック医薬品使用割合の低い地域は「南会津」及び「浜通り」であるが、「南会津」では医療機関数が少ないことに加え高齢者が多く、ジェネリック医薬品に対する不安や不信感が根強く残っている。一方で、「浜通り」では、原発事故を受け医療費が無料となっていることもあり、先発医薬品を選択する患者が多い傾向にある。いずれの場合においても、ジェネリック医薬品の有効性及び安全性を患者に理解してもらうことが必要であり、そのためには医師の理解と協力が極めて重要である。


4.取り組み


 福島県では、平成20年度に医療関係者や保険者、学識経験者、消費者等を委員とした「福島県後発医薬品安心使用促進協議会」を設置し、ジェネリック医薬品の使用状況の把握や課題の整理を行い、県民及び医療関係者が安心してジェネリック医薬品を使用できる環境整備を推進してきた。具体的な取り組みとしては、医療従事者向けの研修会、一般県民向けの出前講座、アンケート調査、ジェネリック医薬品の製造工場見学、「後発医薬品採用基準調査/後発医薬品採用品目リスト」の作成、新聞での広報等を実施している。アンケート調査では、病院、診療所、薬局、県民と毎年対象を変えて、ジェネリック医薬品の使用状況等についての調査を行っている。


(1)一般県民向けアンケート調査結果
 平成29年度に実施した一般県民を対象としたアンケートでは、対象者 500 名に対して 365 名の有効回答を得ることができた。ジェネリック医薬品への認知度については、「よく知っている」、「大体知っている」の回答を合わせて 90%近いことが分かった。(図1)


 一方、ジェネリック医薬品の交付を受けたいと回答した県民は 66%にとどまっている。(図2)ジェネリック医薬品の交付を受けたくない理由としては、効果や品質に対する不安が 80%近くであることが明らかになった。(図3)


 また、先発医薬品からジェネリック医薬品への変更を依頼したことがある県民は47%にとどまっており、アンケート対象のうち半数以上がジェネリック医薬品への変更を依頼したことがないことが示された。(図4)理由としては、品質や効果、安全性への不安が多く挙げられたが、それ以上に変更を依頼できることを知らない県民が多いことが分かった。(図5)これらの結果から、ジェネリック医薬品が先発医薬品と同等の効能効果があることや、希望すればジェネリック医薬品の交付が受けられることなどの周知が十分でないことが明らかになった。

 一方で、ジェネリック医薬品を交付されて使用したことがある県民の90%以上がジェネリック医薬品を今後も使用したいと回答しており、ジェネリック医薬品への抵抗がない県民は今後もジェネリック医薬品を使用したいと考えていることが明らかになった。(図6、7)

 以上のことから、ジェネリック医薬品の使用割合を向上させるためには、医療機関や薬局等による十分な説明や行政の広報等によって、ジェネリック医薬品を使用することに対する抵抗感をやわらげ、まず一度使用してみるという土壌づくりが非常に重要であると考えられる。
(2)病院向けアンケート調査結果
 平成30年度に実施した病院向けのアンケートでは、県内128病院中90病院の回答を得ることができた。県内では90%以上の病院が「2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とする」という政府目標を把握していた(図8)が、「目標を達成している」又は「目標を達成できると思う」と回答した病院は65%にとどまっており、「目標を達成できないと思う」と回答した病院が30%を超えた。(図9)

 理由として多く挙げられていたのが、「適応症が異なるジェネリック医薬品がある」、「院内での意思統一が難しい」、「安定供給に不安がある」等であった。(図10)また、多くの病院が、ジェネリック医薬品を普及・促進するためには、「医師の意識、理解」や、「患者に対する普及啓発」を改善すればよいと回答していた。(図11)

5.今後の取り組み


 福島県では今年度、「後発医薬品採用品目リスト」を作成する予定である。「後発医薬品採用品目リスト」では、各地域において中核的な役割を果たしている20病院を対象に調査を行い、地域ごとに品目を公表することで、地域の特色を活かしながらジェネリック医薬品の使用割合を底上げすることを目的としている。地域ごとのリストを公表することによって、病院や診療所の規模等にかかわらず、使用するジェネリック医薬品の見える化が図られるとともに、薬局において使用頻度の低い医薬品の過剰在庫を減ら
すなどの効果が見込まれる。
 また、県内新聞社や市町村広報誌、フリーペーパー等にジェネリック医薬品に関する案内を掲載し、県民への啓発を行っている。アンケート結果にも示されたように、ジェネリック医薬品の使用割合の向上には県民への周知・啓発が必要不可欠であるため、今後もジェネリック医薬品の品質や安全性等について引き続き分かりやすい広報活動等を行い、県民がジェネリック医薬品を安心して使用できるよう努めていきたい。

練馬区薬剤師会における後発医薬品の使用促進の取り組みについて

一般社団法人練馬区薬剤師会 理事 友光 成仁

1.練馬区の概要


 練馬区は、昭和22年8月1日に板橋区から分離独立し、23番目の特別区として誕生しました。「ねりま」という地名の由来には、関東ローム層の赤土をねったところを「ねり場」とした、また、石神井川流域の低地の奥まったところに沼=「根沼」が多かった事、奈良時代、武蔵国に「乗潴(のりぬま)」という宿駅があった、そして、中世、豊島氏の家臣に馬術の名人がおり、馬を馴らすことを「ねる」といったなど諸説があり、定説はありません。
 練馬区は、東京都23区の北西部に位置し、北東から南にかけては板橋区、豊島区、中野区、杉並区に接し、西から南西にかけては西東京市、武蔵野市との境をもち、北は埼玉県の新座市、朝霞市、和光市に接しています。面積は48.08㎢で東西約10km、南北約4~7kmのほぼ長方形であり、23区の中では大田区、世田谷区、足立区、江戸川区に次いで5番目の広さです。
 人口・世帯数は、住民基本台帳によると令和元年10月1日現在738,432人、377,234世帯で、現在も緩やかな増加傾向で、23区別に見ると、人口は世田谷区の約916,000人に次いで2番目となっています。
 また、練馬区の高齢化率は令和元年10月1日現在22.2%で、東京都の高齢化率23.3%(9月15日現在)より僅かに下回っています。


2.練馬区薬剤師会について


 練馬区薬剤師会は、昭和63年に社団法人として設立し、平成24年に一般社団法人として認可された薬剤師の職能団体で、令和元年11月1日現在、会員薬局数209件、会員数290名が所属しています。
 本会は、日本薬剤師会並びに東京都内に所在する地域及び職域の薬剤師会との連携のもと、薬剤師としての倫理及び薬学の向上と共に地域社会の薬事衛生と公衆衛生に貢献することにより地域社会の福祉の増進を図ることを目的とし、この目標を達成する為に、社保・生涯教育委員会、在宅医療・介護連携委員会、防災委員会、地域保健支援相談委員会、薬学教育委員会、休日夜間委員会の6つの常置委員会が中心となり、医薬品情報管理センタ-及び休日・夜間薬局の運営に関する事業の実施、医師会・歯科医師会また他の団体、練馬区行政とも連携を図りながら多岐にわたる事業を行っています。


3.練馬区薬剤師会のジェネリック医薬品使用促進への取り組み


 練馬区薬剤師会では多岐にわたる事業を行っておりますが、その中でジェネリック医薬品使用促進への取り組みがありますので、いくつかご紹介いたします。
(1)区民への啓発活動
 例年当会では練馬区の各地域で健康フェアを開催し、また区内最大級のお祭りである「練馬まつり」にて他の医療系各団体とともに薬剤会としてブースを構え、健康相談・健康おみくじクイズ・災害への備え・血管年齢測定など色々な催しを行っております。
 その中で、年々増大する医療費の抑制ためにジェネリック医薬品について冊子等を活用し、区民の方々が理解を深め、安心して使用していただけるように、医薬品の専門家としてわかりやすく説明し啓発を行っています。


(2)練馬区休日夜間薬局事業
 練馬区では一次救急医療機関として、練馬区役所の施設内に練馬区夜間救急こどもクリニックが平日・土曜の夜間と日曜・祝日・年末年始は午前から夜間にかけて診療し、練馬休日急患診療所が土曜の夜間と日曜・祝日・年末年始は午前から夜間にかけて診療しており、また石神井庁舎では石神井休日急患診療所が土曜の夜間と日曜・祝日・年末年始は午前から夜間にかけて診療しており、どの診療所でも練馬区医師会の医師が輪番で勤務をしております。
 そこで、練馬区薬剤師会では平成7年5月より、練馬区と協定を結び「練馬区休日・夜間薬局」を開局、平成20年5月に「石神井休日夜間薬局」を開局し、会員の薬剤師30数名が輪番で勤務をしております。薬局の特性上、採用品目は少数で200数十品目、勤務医も様々な為先発医薬品を採用していましたが、平成29年6月の閣議決定において、「2020年(平成32年)9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する。」と定められた事や、一般名処方が普及してきた背景もあり、医師会と薬剤師会と行政とで検討を重ね、今年度よりジェネリック医薬品の使用を開始しました。令和元年11月1日現在、直近3ヶ月の使用割合は約80%となっております。

(3)ランニングストック方式による災害用備蓄医薬品の点検・管理事業
 練馬区では医療救護所に災害用備蓄医薬品が常に保管されており、いつでも安心・安全に医薬品が使用できるよう、期限・温度・衛生環境等が薬剤師により担保されておりますので、その内容のご紹介もさせていただきます。
 練馬区では阪神・淡路大震災を期に地域防災について三師会と協議を開始し、平成8年3月に「災害時の医療救護活動についての協定書」を締結しました。その後、医療救護所に災害用の備蓄医薬品を設置されたのですが、備蓄してある医薬品は温度・湿度・衛生等が劣悪な環境に保管され、期限切れの医薬品等も存在していた事から、実際に災害が起こった際、区民が安心安全に医薬品を使用できるよう、且つ少しでも無駄な税金を減らせるようにと、練馬区薬剤師会は、平成24年1月から「医療救護所流通備蓄医薬品の保管管理」を練馬区から委託されました。事業の内容としては、練馬区薬剤師会の理事や防災委員会の委員を中心に、半年に一度医療救護所へ訪問し、新しく購入した医薬品と備蓄してある医薬品を入れ替え、LOT・期限・衛生環境・保管状況等の確認を行い、入れ替え終えた期限の古い医薬品は練馬区薬剤師会医薬品情報管理センターの医療用医薬品等分譲業務で会員の薬局に購入の協力をしてもらい運用しております(ランニングストック方式)。また、保管状況に関しては薬剤師としての意見を行政に伝え、今では温度管理のできる保管庫が設置されている状況です。ただ、こちらも先発医薬品の備蓄を行っておりましたが、練馬区内のジェネリック医薬品の使用促進が進んでいることもあり、ランニングストックの先発医薬品を購入に協力できる薬局数が減ってきている状況です。
 そこで、昨年度の練馬区災害医療運営連絡会で医師会・歯科医師会・薬剤師会・行政と協議を重ね、災害用備蓄医薬品をジェネリック医薬品へ順次変更する事の了承が得られました。そして今年度は、会員薬局へ災害用備蓄医薬品のジェネリック医薬品使用状況調査のアンケートを実施している所です。


 以上のように練馬区薬剤師会では、区民へのジェネリック医薬品啓発活動だけでなく、行政協力事業として、実際に医薬品を処方する医師会や歯科医師会の先生方にジェネリック医薬品を使用していただく機会を少しでも提供することで、ジェネリック医薬品に対する理解を深めていただきその使用促進を進めていきたいと考えています。